不思議電波塔
夢は努々忘れるな。
人と夢が隣り合うと儚いものとなろう。しかしそれでも人は夢を見る。
はかないものは罪に死することもなく、甘やかに軽やかに心のままに彩ってゆく。
汝は何者だ。
はかないものでありたいか。
聖杯には一滴の水もなかった。
収まるべき鞘を持たぬ、きらめく剣が奇跡を望んでいた。
あらゆるものの代価となりし金貨が、意味と輝きを失っていた。
土に穴をあけるこん棒がそこかしこに放り出されていた。
「ガラクタか」
由貴が呟くと、ひっひっひ、と笑う声に出会った。
「ひっひっひっひ。火が欲しいね。是が非でも日が欲しいね。ひっひっひ。さて、おいらは『ひ』を何回言ったでしょう?」
カラフルなキノコに、ぬいぐるみのクマがゴロゴロ寝そべっていた。
「7回」
涼が答えた。クマはぽわんと好反応を返す。
「おいら好みの可愛い女の子だねぇ。可愛いから負けに負けて、正解にしといてやる」
由貴が、ムッとした表情を返した。
「負けに負けたら勝ちだよね。政界にしてやらなくていいから」
「ちっ。男かよ。おいらは女の子が好きなのー。この子と、お姫様っぽい子と、金髪の子だけおいて、後は先に行っていいからー。バイバーイ」
涼とフィノとユニスのことを指差して、しっしっと手を振った。
涼とフィノはいいとして…。
全員ぽかんとして、ユニスを見る。ユニスは少し怒ったように言った。
「私、男です」
あ、とクマが口を開けた。ユニスのそばにいた四季がクスクス笑い出す。
「ごめ…。ユニス。あはは。クマさん、女の子が好きって言っているわりに、節穴」
「ん、な、節穴!?つか、おいら、クマじゃねー!!」
どっからどう見てもぬいぐるみのクマである。
爆笑が起こった。ジャスティとカイがはしゃぐ。
「あはははは。クマさん、おもしろーい」
「クマじゃん。どう見てもクマじゃん。ありえねー」
「違うっつってるし!お前ら人をバカにしに来てんのか!?おいらが怒ったら、怒ったら…」
「怒ったらどうなるの?」
「菓子がいっぱい出来るんだぞ!!」