不思議電波塔



 バラバラバラっとお菓子の雨が降ってきた。

「はっ!しまった!発音間違えた!菓子じゃなくて貸しだ!いかりパワーを要らんものに使ってしまった!ちきしょー!!」

 ジャスティとカイはお腹を抱えて笑い転げている。

 ぬいぐるみのクマは、ぷんぷんだ。

 気の毒に思ったのか、涼が落ちているお菓子を拾い、包み紙を取ると、ひとくち食べた。

「…うん。美味しいよ。お菓子」

 ぬいぐるみのクマは、ぽわーんとした。

「よいねぇ、よいねぇ。君、可愛いねぇ。君のためなら、あと、百万個くらいお菓子作ってもいいよ」

 由貴は、やっぱりご機嫌ななめだ。

「涼の欲しいものは俺があげる。涼に話しかけるな」

 四季がクマに忠告する。

「由貴、一途だから。僕が涼ちゃんと仲良さそうにしてると、たまにやきもち焼いてるから。気をつけて」

 忍がぽつりと言った。

「今の由貴の言葉で、涼は明らかに『会長…(はぁと)』になってる」

「え?」

 由貴が涼の方を見やる。涼がぽーっとした表情で自分を見ているのがわかり、視線を戻した。

 クマは面白くない。

「なんなの?のろけに来たの、チミたち。おいら、これでも忙しいんですけどー」

 ぐだぐだキノコの上で寝返りを打った。

「クマさん、忙しいようには見えないけど」

 ジャスティがツッコミを入れる。クマはみよーんとのびをした。

「おいらは『暇をもて余す』ことで忙しいんだよ。忙しいって字は日清偏…じゃなかった、立心偏に亡くすと書く。心を亡くすほどのことだから、忙しいって字になるのさ。あー暇だー。暇過ぎて忙しい」

 カイが?という顔をした。

「立心偏って何?」

 カイだけではない。ジャスティ、ユニス、ルナ、イレーネ、リュール、フィノ、ノール。…要はカウフェリン・フェネスの者がわからないという顔をしていた。

 カウフェリン・フェネスの言語は地球で使われている言語ではない。漢字や英字といったものもないのである。

 涼がノートに「忙」という字を書き、カイたちに見せた。

「こういう字を書くの。左側の字が『心』を表す。それが立心偏。右側の字は亡くすの意味。心を亡くす、で『忙しい』」



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