不思議電波塔
「あのー…。由貴くんたち、何かあったんですかー?」
机で眠っている由貴の頭を、本田駿がつんつく突っつく。
綾川四季と桜沢涼は休み。別のクラスの揺葉忍も休みだという。
由貴は責任を感じたのか、ほとんど意地で登校してきたのだ。
一部始終を知っている吉野智が由貴を庇った。
「本田くん、会長、今日は寝かせといてやれ。昨日、地震があったろ?その付近に会長たちもいたらしくて、ちょっとした騒ぎに巻き込まれて、疲れてんの」
「吉野さんも眠そうですが」
「眠いよ。今日はダメだ。寝る。おやすみー」
「あららら…」
明日見苳夜はマイペースに昼頃から登校してきた。
それと、尾形晴も。
尾形晴は由貴の席まで来ると「おはよう」と声をかけてきた。
表情が柔らかい。由貴は「おはよう」と返した。
晴は「ごめんね」と言った。
「変なの拾って。ああいうことになるとは思わなかったから」
「いや…。何であんなの拾ったの?」
「うーん…。退屈、してたのかなぁ。あまり深く考えてなかったんだけど」
こだわらないような晴の口調に由貴はぽかんとする。
「え…。退屈って…それだけで?何か悩みがあったとかでもなく?」
「うん。そう。だから、ごめんね。僕、おかしいかな?」
「おかしいって…」
晴は悪気なくにこっとした。
──こういう人間もいるのだ。
由貴は何だかどっと疲れたように机に倒れ込んだ。
「あーもー何だそれ!」
晴が笑った。
「ふぁいと、由貴」