不思議電波塔
その後のお話
カウフェリン・フェネスから戻ってきた四季は、それまで気力だけで持っていたのか、倒れてしまった。
忍と涼もその日は学校を休みたいと言い、由貴だけが行くと言って登校したのである。
こちらがわにいた隆史、早瀬、祈、智、苳夜は、由貴たちほど体力を消耗しているわけではなかったから、苳夜を除いては普通に学校に行ったり、出勤したりという感じになった。
苳夜は午前中だけ眠って、お昼頃から気分転換のように登校してきた。
午後14時を回った頃、四季は目を覚ました。
気分は悪くなかった。ぼーっとしていると、昨日起こった出来事が夢のように思い返された。
でも、夢ではなかったのだ、と思う出来事がひとつだけあった。
「青龍の森の書」がこちらの世界に形として残ったのである。
──トントン。
ノックの音。
四季が「はい」と返事をすると由貴が顔を見せた。
「──由貴」
「四季、大丈夫?」
「うん…。ってちょっと」
由貴は制服の上着を脱ぐと、眠っている四季の布団に潜り込んで来た。
「ごめん。俺、無茶苦茶眠い。眠らせて」
「ちょ、ちょっと寒い」
四季は外から来た由貴の冷気に触れてコンコンと咳込んだ。
由貴が「ごめん」と謝って四季に布団を掛け直す。
しばらくじっとしていると咳はおさまって、代わりにクスクス笑い声がしはじめた。
「由貴、相当疲れてるね」
「ん…。疲れた」
「涼ちゃんのベッドにでも潜り込めばいいのに」
「そんなことしたら、涼の家出入り禁止になるよ」
「ふふ」
「涼の家に行ってみたら、眠ってた。起こさない方がいいかと思って」
「そう」
子供の頃、一緒に眠ることはあったが、この歳で一緒に布団に潜っていると、何だか可笑しい。
だが、由貴は本当に疲れていたのか、数分もすると軽い寝息を立てて眠り込んでしまった。
四季は何となく楽しい気分で由貴の寝顔を見つめてしまう。