不思議電波塔



(『虚無』だって──)

 由貴の思っていることを嘲笑うかのように、由貴に見えていないもの『  』は立っていた。

(見えていないんだね、何も)

 『  』は透明な手で、ぱらぱらと小説の書かれたノートをめくると、片手に消しゴムを取った。

(僕のことを見てくれないからだよ)

 見ようとしないなら、見せつけてやる。

 さあ、見るがいい、或るがままの『今』を。

 消しゴムがざっと、ノートの表面を撫でた。



     *



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