不思議電波塔



 涼が部屋を訪れたのは、メールが送られてきてから10分後のことだった。

「──座ってて。何か飲む?」

「涼、買ってきた。はい。会長の分」

 紙の容器に入った、温かい珈琲を差し出された。

「ありがとう」

 由貴が嬉しそうに受け取るのを見て、涼は可憐な微笑みを浮かべる。

 桜沢涼とは高校に入ってから出会った。

 正確には高校生になる前の春休みに由貴が高校の下見に来ていると、その時桜沢涼も学校を訪れていて出会ったのだ。

 由貴は中学までは男子校に通っていて、どちらかというと男子といる方が落ち着くタイプで女の子を寄せつけない雰囲気があった。

 涼の方もおとなしくて儚げな美少女という感じで男子を寄せつけない雰囲気であったため、その由貴と涼が恋愛関係に至るまでというのは「端から見るとお互いに好き合っているのはわかるのに、当人同士が奥手だから、じれったくなってとっととくっつけたくなった」というのがふたりを見ていた人間──由貴と涼の友人である吉野智の談である。

 涼が由貴を「会長」と呼ぶのは由貴が生徒会長であるからだ。涼も生徒会役員で副会長の立場にある。

 高校一年の時はふたりともクラス委員で、涼は由貴を「委員長」と呼んでいた。

 つまり、そういう優等生同士が恋に落ちたのである。

 ふたりとも恋心が表面上にはほとんど出てくることはなく、ふたりでいても、ある一定の乱れない空気に守られている感があり「完璧過ぎてよくわからないカップル」とも言われていたりする。

 もっとも当人である由貴と涼にとってはお互いに自然体でいられるから一緒にいるのであり、特に不思議なことではないのだが。



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