不思議電波塔
初めて通る道の散策も楽しみながら、由貴と四季は苳夜のアパートの部屋までたどり着いた。
チャイムを押してしばらく待つ。音沙汰がない。もう一度押してから、由貴は声をあげた。
「苳夜ー。生きてる?綾川由貴だけど」
中で音がした。近づいてくる足音。ドアが開いた。
「何…?ああ由貴。四季も。何で来てんの」
「何って親父が心配してる」
「あー…そういえば、先生から電話あった…」
今日の出来事なのに、遠い昔の話でもするように答えている。
由貴と四季が見て驚いたのは苳夜の頭の色だ。
シルバーアッシュの髪。前は脱色しただけの髪色だったのが、思いきり銀髪になっている。
Tシャツに上着を一枚羽織った腰パンスタイル。何処かのバンドのメンバーを目の当たりにしているかのようだった。
「苳夜どうしたの、その髪…」
いくらなんでもこの色は登校したら注意されるだろう。が、苳夜はまったくこだわっていない様子でさらりと言った。
「あー、コレ?いい色だねーと思って。気分転換。カッコいいっしょ?」
芸術家には一般論など要らないようである。
「つか、由貴、四季、頼みがあるんだけど」
「何?」
「金、やるから、何か買ってきてー!ハラ減った!俺、まともにメシ喰ってねぇー!」
由貴と四季は笑ってしまった。
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