不思議電波塔



 四季は並べて見比べ、率直な感想を述べた。

「最初に描いた方が、絵的な意味では優れていると思う。でも『マンガ』として見るなら、僕は後に描いた方が好き」

「サンキュ」

 苳夜は笑った。

「あー、最初に描いた方がいいとか言われたらどうしようかと思ったー!俺もマンガ的に読みやすいのか、これ?って思って描き直したんだよね」

 じゃ、このページは後に描いた方を採用させていただきます、と恭しく四季から両方の原稿を受け取った。

 由貴が緑茶をいれてきた。こたつの上に置く。

「ところで、苳夜のその原稿、あとどれくらいかかるの?親父が心配してた」

「あー…出席日数ね。実を言うと俺もどれくらいやばいのかわかんないんだよね。でも、俺とりあえず、この世界の入り口に立ってしまったから、優先すんなら将来的に開けている方だよなぁと思って」

 自分にはない発想で物事を語る苳夜に、由貴は真顔で苳夜の顔を見つめる。

 苳夜は苦笑した。

「俺が由貴みたいに飛び抜けて勉強が出来る奴だったら、また違うこと考えていたのかもわかんないけどさ。俺はいいのよ、これで。学校で教えてくれる勉強を軽んじるわけじゃないけど、両方をとろうとしたって物理的に時間が足りなくちゃ無理なの。まあ、高校二年もここまで頑張ってきてはいるから、進級出来るなら進級したいとも思うけど。自分の歩きたい道を見つけたから留年しましたって言っても恥ずかしいことじゃねーだろ。別に」

 四季は「いい道を見つけたね」と言った。苳夜の表情には何処か誇らしげなものがあったからだ。

 苳夜は「ふたりとも来てくれてありがとな」と言った。

「原稿、3分の2はペン入れしてるから、早ければ明後日くらいには登校出来ると思う」

 四季と由貴が顔を見合わせて、四季が苳夜に提案した。

「苳夜くん、原稿の下絵が上がっているんだったら、僕、アシスタント出来るよ。画材の使い方教えてもらえたら」

 苳夜の原稿を見る限り、これはペン入れだけでもかなり時間がかかるだろうという印象だった。

 苳夜は驚いて「マジ…?」と呟く。

 由貴も笑った。

「俺も手伝えることがあれば。せっかく苳夜の家来たんだし」



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