不思議電波塔



 苳夜につけペンの使い方を教えてもらった四季は、白紙にGペンと丸ペンで線を引いて練習した。

 10分くらいしてから「僕、使うのは丸ペンだけにする」と苦笑する。

「ペン先替わると描線不安定になる。つけペンだったら丸ペン、あとはロットリングで描いた方が綺麗に仕上がると思う」

「お。つけペンの侮り難さに気づきましたな。さすがは四季。これね、俺も未だに使いこなせないのよ」

 苳夜はそう言ったが、四季が練習用にフリーハンドで描いた風景を見て「これだったら全然オッケーなレベルですが」と評価した。

「じゃ、四季は背景お願いしちゃっていいですか?背景は俺も丸ペンかロットリングしか使わないんで」

「いいよ」

 四季のそばで由貴もつけペンで描いていたが、由貴は5分くらいでやめてしまった。

「これ、慣れるの相当時間かかる。俺、描くのはベタ塗りか吹き出しか枠線だけにしておく。あとはこれ何?スクリーントーンだっけ?」

「ああ、トーン?これ、トーンナイフで切って貼っていく作業だけど、出来そう?」

「トーンの番号と範囲指定してもらえたら」

 そんな感じで作業に夢中になってしまい、気がつくと20時になっていた。

「すごい。ありがとう。ふたりとも。恩に着る。今度何か奢らせて」

 ペン入れはほぼ仕上がり、トーンも半分くらいは貼り終えた。苳夜はアパートの外までふたりを送る。

「苳夜も早く原稿上がって眠れるといいね」

「あー。これ終わったらたぶん俺爆睡だわ」

 苳夜と別れて、ふたりは夜道を歩き始めた。



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