不思議電波塔



 一方、四季の飛ばされたリオピア宮廷では、不思議なことが起こっていた。

 誰も使ったことのない離れ業を四季が使えるのである。

 事の発端は、ユニスが四季に「こちらの世界の服に着替えますか?」と言ったことだった。

 四季はユニスたちが着ている服を見て、少し考えた。

 宮廷内にピアノがあることを知り、こちらの世界でのピアノはどんな音がするのだろうという純粋な興味が湧いたのである。

「ピアノが弾きやすい服なら」

 そう答え、四季は持ってきてもらった紙と筆で、するすると服のイメージを描き始めた。

 宮廷服はたくさんあるため、見て回って決めるとなると時間がかかってしまう。

 それで絵を描いて、それと近い服を用意してもらおうと思ったのだ。

 少し肌寒い感じがしたため、長袖にした。ユニスたちと並んでも違和感がなく、動きやすい服。

 描いた服は司教や魔導士の着ていそうな、丈の長いものだった。手元は動きやすいように袖口は絞られている。

「描けた」

 四季がそう言い、描いた絵を手に持って眺めた時だった。

 その絵がふっと変化した。

 ふわっと光を帯び、次の瞬間には、四季の手にはイメージした通りの服があったのである。

「え…?な、何で…?」

 四季自身驚いて、手に持っている服を広げてみる。

 自分の身体に当ててみた。大きさもピッタリだ。

「四季…。あなたはこちらにはない魔法が使えるのですか?」

 ユニスに問われ、四季は首を振った。

「ううん。こんなこと初めて。どうしてこういうことが起こっているんだろう」

 イレーネが言った。

「この世界を描くことの出来る力をあなたが持っているからだよ。考えてみれば当たり前だ。私の着ている服だって、四季のイメージのうちのひとつなんだから」



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