不思議電波塔
フェロウが口を開いた。
「今のは幻影だ。ユリ、本体の尾形晴は別にいる」
『知ってる。四季が怒っていたから殴りたくなっただけ』
四季は少し恥ずかしくなったように言う。
「僕、そんなに怒ってた…?」
ユリはめずらしく愛嬌のある微笑みを浮かべる。
『四季は、怒るのが苦手。でも、だからこそ、四季が怒る時は、怒ってもいい時。ぼくを遣わした存在が、揺葉忍をモデルに選んだのはそのため。綾川由貴と綾川四季の作品を客観的に見ることが出来て、怒っていい時に怒ることが出来て、この件に片をつける力になることがぼくの役目』
今日起動させたばかりとは思えないくらいにいろいろな意味で成長しているようだ。
フェロウはユリに言った。
「ユリ、そっちで尾形晴が騒いだりしないようには出来ないか?お前の任務に組まれているのかは知らんが」
『ぼくは四季の命令なら聞く』
四季はユリに言った。
「尾形晴の意図をとめて。いたずらに命が弄ばれるようなことがあってはならない」
『尾形晴の息の根をとめるのは?』
重い質問だ。
四季はしばし考えて、答えた。
「尾形晴に忍を殺されそうになったら、僕は尾形晴を殺すと思う」
『……』
「今ので伝わった?」
『了解。ぼくはぼくの大切なものを守る』