天使の瞳

「…それっておかしくないですか?あたし、全然知らない…その人の事。それに、タクの彼女でもないし嫌われる覚えが全くないんですけど」


なんかイラっとした。

だから口走って声を吐きだした。


納得なんていかない。あたしがどんだけ辛い目に合ってると思ってんの?


「この子の友達言ってた。いつも拓斗くんと居る音羽ちゃんが羨ましいって言ってたんやて。仲いい所とかムカツクって、嫉妬心もあったみたい」

「……」

「で、それから数カ月後。交通事故で亡くなったんやて。あの廃墟の旅館近くのトンネル付近」

「それって、あの急カーブの事ですか?」


千穂は顔を強張らせてそう言った。


「そうそう。お父さんと乗ってたんやて。ガードレールにぶつかって助手席に乗ってた彼女だけが亡くなった」

「あの、敷き詰められた鶴は関係あるんですか?」


千穂はここぞと言うばかりに真剣な目付きで問いただす。


「あれは当時、仲良かった子たちが織ったもの。現場近くに置いてあったのが誰かの手によって旅館に移動したみたい」

「じゃあ、お地蔵さんは?」

「それは分かんない。あそこで亡くなった人、多いから」

「でも何でこの人なん?」


あたしの変わりに全て聞いてくれる千穂。

だからあたしはそれに耳を傾けるままだった。


タクは難しそうな顔をして聞いている。そんなタクに何だか嫌気がさした。



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