天使の瞳
「どう?大丈夫?」
「うん。まぁ…」
「そっか」
晃くんは座った両膝に肘を置き、火を点けた煙草の煙を吐きだした。
「なぁ、晃くん?」
「うん?」
あたしの問い掛けに晃くんは首を傾げて不思議そうに見た。
「晃くんな、この夏何処かに行ってた?」
「え?何処って何処?」
「いや、だから遊んでた?」
「うん。って言うかそれがどうしたん?」
「タクってなずっとあたしんちに来るねん」
“彼女と遊べばいいのに”
付け加える様に呟いたあたしに晃くんは声にだして笑った。
そんな晃くんをあたしは見る。
「いや、あいつ今おらんやろ」
「さぁ…どうやろ」
「おったら音羽ちゃんちに行かんやろ」
「うーん…」
「何なん?迷惑なん?」
「迷惑って言うかな、あたしタクに対してはお礼とか言えんねん。ほら、なんて言うか文句ばっかり?…だから何て言うか、あたしがタクを縛りつけてるみたいって感じ」
今までツンツンと突いていた氷。
ほぼ、溶けてきたその氷をあたしはすくって口に含んだ。
「つーか、アイツ馬鹿やからそんなん何も思ってないやろ」
「そーかな…」
「まぁ昼はアカンって言ってたから遊んでへんけど、いつも夜は出歩いてたで」
「そーなん?」
そんな事知らなかったあたしはストローを咥えたまま晃くんに視線を向けた。