天使の瞳
エピローグ
あれから1カ月が経ち、夏が終わろうとしたある日。
あの、廃墟の旅館の取り壊しがあった。
皆の意見を尊重し、市が撤去をした。
そしてあたしの周りに起こってた幻覚も消え、まるでこの夏は夢を見てるかのような日々だった。
多分あたしが見た物は天使の瞳の様に綺麗な人物だったに違いない。
美人で有名だった彼女。
きっと、幸せになりたかったんだ。
手に切り刻んであった傷痕も少しづつ消え去り、あたしの身体も少しづつ体調を取り戻してた。
「なぁ、音羽?俺らもう一カ月やん」
「は?」
馬鹿みたいに笑う目の前のタク。
本間、相変わらずの馬鹿や。
「だから付き合って一カ月」
「えっ!!音羽、アンタ拓斗と付き合ってたん?」
そう声を上げるのも無理もない。
目の前の千穂はここぞとばかりに目を見開く。
「…なわけないやん」
そう言ってあたしはため息交じりに呟いた。
「あ、そうなんや。また拓斗の馬鹿会話か」
「そうそう」
「でもー…もうヤってんねんからそう言う関係やん。…--いってーなぁ!!」
本気でタクの頭を殴ってやったあたしに、タクは舌打ちをして頭を擦る。
そんな空気に混じって聞こえて来た晃くんの笑い声。
また、変わらないままの風景だ。
そんな変わらないままが、
あたしは
好き。