天使の瞳
1st
その始まりは夏本番だった。
「えー、明日から高校最後の夏休みに入るけど、ちゃんと規則正しい生活を送る事。分かったかぁー」
「はーい」
くそ暑い夏。それだけでウンザリしてしまう夏が、今からスタートする。担任の声が教室に響くとともに生徒達の声が反響した。
パタパタと下敷きとウチワで仰ぐ生徒達の姿を見るだけで暑さが込み上げてくる。
「おい!聞いてんのか、神谷(かみや)!!」
担任が勢いよく発した声に思わずビクンとする。
気が抜けていた所為か、いっきにあたしの身体は飛び跳ねた。
「あ、何?」
あたしの前に座ってる拓斗(タクト)はダルそうに机に伏せていた身体を上げる。
「何?…じゃねーぞ。真面目に夏休みを過ごすんだぞ。新学期早々、謹慎って事はないように」
「はいはい」
“うるせ”小さく呟いたタクは深いため息をつき真っ青な綺麗な色のウチワでパタパタと仰ぎ始めた。
「はーい、じゃあ終わるぞー」
担任の声とともにいっきに教室がざわめく。
これから夏休みに入ると言う事は皆にとって最高の日々なんだろう。