天使の瞳
「ね、音羽(おとは)!!」
バンっと、机の音を叩くと同時にまたもやあたしに身体がビクっと動く。
目の前に居る千穂(ちほ)を見つめるとここぞとばかりに大きく目を見開いてキラキラと輝かせた。
「ん?どーしたん?」
「どーしたん、ちゃうやん。一緒に海行こうよ」
「海?」
「そうそう。だって夏やで。楽しまなアカンやん」
「えー…」
「なんなんその返事」
千穂は少し膨れっ面になりながら目を細くした。
「だって水着嫌やもん。最近太ったしなー…」
そう言って自分の腰に手を当て、そこについてるお肉をムニュっと引っ張ってみた。と、同時にゲラゲラと笑った声が耳を突きぬける。
その下品な笑いに思わず視線を上げると前に座っているタクは後ろを振り返って、あたしの机に腕を置いた。
「つかな、誰もお前の身体なんて見ぃへんわ」
「はぁ!?何なん、ムカツク」
そう言ってあたしは頬を膨らませた。
あたしとタクは中学からの友達。…いや、友達じゃないかも知れないけど。
タクは中学からモテ皇子で、女の子からキャッキャッ言われる存在。背も高くてサラサラした薄い茶色の髪が男ながらに綺麗と思う。
外見はよし、でも性格はダメだ。
未だにケラケラ笑ってるタクが憎い。だからここぞとばかりに睨んでやった。