天使の瞳
2nd
暫く走って見えて来たのは明かりの点いたあたしの家。
家の前に着くとタクは車から降りてスライドドアを開ける。
そして降りようとした瞬間、ガクン…と滑り落ちるみたいにあたしの足が地面についた。
一瞬、足の感覚が無くなったみたいに動かなかった。
「おっと…何してんねん!!」
「ご、ごめん…」
咄嗟に支えてくれたタクの両肩に両手を置く。
だけど、あれ?
変な違和感を感じてしまった。
タクの肩に置いている左手に温もりを感じない。
右手はタクの温もりを感じるのに左手は全く感じない。
タクの肩からスッと手を離し、あたしは包帯で巻かれてある手をジッと見つめた。
あぁ、そっか。
包帯してあるからだ。
でも、何だろう。あまり感覚がないのは気の所為だろうか。
「どうしたん?」
頭上からタクの不思議そうな声が落ちる。
「なぁ、タク?」
「何?」
「この手ってさ、いつ治るん?」
「さぁ…1週間くらいで治るやろ。化膿止めと後、貧血の薬やから」
「うん…」
そう小さく呟いたあたしはもう一度手の平をジッと見つめた。