天使の瞳
2nd

暫く走って見えて来たのは明かりの点いたあたしの家。

家の前に着くとタクは車から降りてスライドドアを開ける。


そして降りようとした瞬間、ガクン…と滑り落ちるみたいにあたしの足が地面についた。

一瞬、足の感覚が無くなったみたいに動かなかった。


「おっと…何してんねん!!」

「ご、ごめん…」


咄嗟に支えてくれたタクの両肩に両手を置く。

だけど、あれ?


変な違和感を感じてしまった。

タクの肩に置いている左手に温もりを感じない。


右手はタクの温もりを感じるのに左手は全く感じない。

タクの肩からスッと手を離し、あたしは包帯で巻かれてある手をジッと見つめた。


あぁ、そっか。

包帯してあるからだ。


でも、何だろう。あまり感覚がないのは気の所為だろうか。


「どうしたん?」


頭上からタクの不思議そうな声が落ちる。


「なぁ、タク?」

「何?」

「この手ってさ、いつ治るん?」

「さぁ…1週間くらいで治るやろ。化膿止めと後、貧血の薬やから」

「うん…」


そう小さく呟いたあたしはもう一度手の平をジッと見つめた。




< 46 / 136 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop