天使の瞳
「血が止まんなくて…すみません」
「いやいやタクくんが謝る事ないわよ。大丈夫なの?…音羽」
「…うん」
ふとタクが言ってた言葉が頭を過った。
人間大丈夫って聞かれると、咄嗟に大丈夫…って言ってしまうって、何となく分かった気がした。
誰がどうみても大丈夫とは言えない手。
そう思うと大丈夫じゃないかもって思ってしまった。
「あっ、飲み薬あるんで飲むように言ってやって下さいね」
なんだかんだ明るく振りまくタク。
そんなタクに、
「子供じゃないんだし、言われなくても飲むよ」
素っ気なくあたしは返した。
「はいはい、そーですか。あ、そうや。またいつでもいいから保険証持って来いって」
「あーうん。分かった」
「んじゃあな」
荷物を全部置いてくれたタクは手をヒラヒラと振る。
「ごめんね、タクくん」
「あー、いいっすよ」
「ありがとね」
「はーい」
タクが帰った後、あたしはとりあえず薬を飲んで、不自由な手にため息をつきながらシャワーを浴びた。