天使の瞳
部屋に戻ってもやっぱりしっくり来なかった。
頭を過る様な恐怖感と胸騒ぎ。
額から落ちてくる汗に寒さを感じてしまった。
まだ、夏なのに。夏、真っ最中なのに、この異様な震え。
フラッシュバックみたいに過る怖さがあまりにも怖くて、あたしは飛び上がるようにベッドからすり抜け隣の部屋のドアを叩いた。
「歩夢(あゆむ)!!ねぇ、歩夢ってば!!」
バンバン叩いて返事が返って来ない一個下の弟の部屋をあたしは勢いよく開けた。
ガンガンにクーラーがかかってある部屋のベッドに歩夢はタオルケットを身体に巻き付けて眠っている。
「なぁ、歩夢ってば!!」
歩夢の身体をグラグラと揺すると、歩夢は眠そうにゆっくりと目を開ける。
「あ?何やねん…」
「何でもう寝とるんよ」
「は?眠いからに決まっとるやろ」
素っ気なく返した歩夢はあたしに背を向ける様にもう一度眠りにつく。
そんなもう会話すらならない歩夢の横にあたしはつかさず横になり歩夢のタオルケットを引っ張った。
「は?なんでお前がおんねん」
あたしが寝た事に気付いた歩夢は振り向いてそう言った。