天使の瞳
「なー、音羽行こうよ。別に太ってへんやん。あたしより音羽のほうが細いんやからいいやん。…な?」
「うーん…。つか別に褒め言葉になってないし」
「んじゃ、俺も行くわ」
顔を顰めた瞬間、呑気な男の声が耳に入る。
目の前のタクは微笑みながらあたしと千穂を見た。
「は?タクなんか誘ってないし」
「女二人やと危ないから着いてってやるわ」
「つか、タクと違って襲う人なんかいませんから」
フンっと顔を背ける先にはにこやかに笑った千穂の顔が目に入る。何か言いたげな千穂の表情に思わず顔が引きつった。
「うん。じゃあ、拓斗も一緒に行こうよ。晃もおいでよ」
ほらね。
そうくると思った。
「ちょ、千穂何でそーなるん?嫌やわ」
「いいやん別に。拓斗だって女二人じゃ心配って言ってるんやし」
「そんなん嘘に決まってるやん。つか、タクは女おるんやからその子と行ったらいいやん」
「つか別れたし」
タクの返してきた言葉があまりにも即効で反射的にタクをガン見してしまった。
見つめる先のタクは何気ない顔でウチワで仰ぐ。その生温い風がフワっとあたしの前髪を揺らした。
「え?マジ?」
「うん。マジ」
はやっ!!っと心の中で呟きながら晃くんに視線を送ると、晃くんまでもが頷いてクスクスと笑った。