天使の瞳
何でだろう。
一人になるとよりいっそうに恐怖が襲ってきた。
思い出したくもない事をついつい思い出すし、そして変な嫌な妄想までしてしまう。
風呂に入ってんのに身体も温まらない。温まるどころか冷えてる感覚だ。
風呂から上がって髪を乾かしタクの部屋へと向かう。
ドアを開けるとタクは横に寝転んだままペラペラと雑誌を捲ってた。
「おー、上がったん?」
「うん」
「んじゃ、俺入ってくるわ」
そう言ってすれ違うタクの腕をあたしは引き止める。
「何?」
「早くしてな」
「はいはい」
面倒くさそうに言ったタクはバタンとドアを閉め、ドタバタと響く足音が少しずつ消えていく。
タクが居なくなった部屋は馬鹿みたいに笑っているお笑い芸人の声が響く。
何がいいんだか分かんないけど、テレビに映ってる皆はゲラゲラと笑ってた。
なのに、誰も居ない部屋が怖くて、あたしはタクのベッドに寝転がりタオルケットを頭まで被った。
「タク、早くしてよ」
まだ時間なんて全然経っていないのに、そう願ってしまう。
こんなに恐怖感を味わったのも産まれて初めてだ。
未だに妙に傷む肩を擦りながら、あたしは目をギュっと瞑った。