天使の瞳

ここ最近、寝つけが悪い。

クーラーの機械の音が秘かに聞こえる。…と同時に聞こえて来た変な音に身体が強張った。


コンコン…と誰かがノックをする音。

空耳だろうか。でも、耳に何かが張りついた様にノックの音が聞こえる。

何度も何度も耳を擦って消そうとするけど、一向に消えることはなく音は次第に大きくなる。


「…タク!!起きてよ、タク!!」


ベッドから降りタクの身体を揺する。

うーん…と寝がえりをうつタクの身体をあたしは何度も揺すった。


「ねぇ、タクってば!!」


バシバシと叩くタクの身体。次第に目をうっすら開けてくるタクの口が秘かに動いた。


「うん?どした?」

「分からん。誰か居る」

「はぁ!?」

「誰かノックしてる」

「え?どこ?何も聞こえん」

「お願い。見てよ」


眠そうな目を擦りながらタクは起き上がってドアを開く。


「ほら、誰もおらんって」

「違うねん。窓やって窓」

「はぁ!?こんな所から来る奴なんておらんやろ」

「やけど…」


聞こえるんやもん、聞こえるんやもん。

でも、タクが窓に向かって行った瞬間、その音はピタっと止まった。
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