天使の瞳
「ほら、なんもないやんけ。つか、外クソ暑い。身体もいてぇー」
床で寝てた所為か、タクは伸びをする。
さっきの、何やったんやろ。
また変な幻聴…?
「なぁ、音羽?」
その声にビクンと身体が上がった。
「え、あぁ…何?」
「ごめん、俺もそこで寝ていい?身体痛いわ」
「あ、う、うん。いいよ」
「音羽壁がわ行って。落ちたら嫌やろ」
「…うん」
身体を壁側に密着させると、すぐ隣にタクが寝転ぶ。
身体と身体がくっつく距離。
タクはあたしに背を向けて、またもう一度寝る態勢に入った。
…あたしの耳、やっぱどうにかしてる。
変な幻聴がよく耳に張り付いている。幻視だって起こるし…
見えない物が見えるってこんなに恐怖に満ちた事は何もない。毎日、毎日何でこんなに恐怖に怯えていかなくちゃいけないのだって分かんない。
夜が怖くて怖くて仕方がない。
一生懸命、楽しい事を思い出しても結局は嫌な事ばかり思ってしまう。
快楽に満ちたら――…
グッと…寝られるのかな。