天使の瞳
3rd
「なぁ、タク?…寝た?」
「どした?」
「タクさ、あたしがいいよって言ったらしてくれるん?」
「は?」
「だからあたしが――…」
「だから何を?」
「…――あたしを抱いて」
「は?どーしてん、お前」
驚いた声を出したタクは身体をあたし側に向ける。
そんなタクにあたしは頭を何度か擦って深い息を吐きだした。
「寝られへん。寝たくても寝たくても眠りにつく事ができへん。変な幻聴だって聞こえるし、幻視だって起こるし」
「だからって何でそーなんの?お前らしくないぞ」
「快楽に満ちたら何もかも忘れて寝れそうやもん」
「音羽?…どーしてん?」
タクがあたしの身体を軽く揺すった。
「だから…タク…」
手で目を隠すあたしの目尻から涙が込み上げてきそうだった。
「悪いけど、音羽とはそーいう事出来んから」
「何でなん?」
「何の感情もねーのに音羽とはできへん」
「だってタク…感情ないのに他の子とはしてるやん。だったらあたしも他目線でいいやん」
「無理。音羽は音羽やから、他の奴とは一緒にしたくない」
「意味わからん」
「意味分からんのは俺の方。もう寝るぞ」
そんなあたしをタクはグッと自分の方に引き寄せた。