天使の瞳
「あ、…おはよ」
「…はよ」
夜中に言った自分の言葉が駆け巡る様に頭の中を遮った。
何で言ったんだろう…と思う反面、タクは何もなかったかのように、平然とする。
「あ、音羽?リビングにパンあるから食ってええで」
「あ、うん」
コクンと頷いたあたしはリビングに足を進めた。
タクのお母さんが買って来てくれたんであろうパン屋さんのパンが何個かテーブルに並べてある。
その中からあたしはクリームパンを手に取って袋を開けた。
ゆっくりと頬張っていくあたしの頭は未だにスッキリと晴れない。
ただ、考える事が多くて、胸騒ぎばかりがした。
「音羽、この後どーするん?」
リビングに入って来たタクは冷蔵庫の扉を開けながらそう口を開く。
「…うん。帰る」
「大丈夫なん?」
「うん、大丈夫」
「ほーら、また音羽は大丈夫って、咄嗟にだすやろ」
タクはグラスに注いだ麦茶をあたしに差し出した。
「だって、大丈夫やもん」
「そうならいいけど、あんま無理すんなよ」
「…うん」
ペットボトルに入ったミネラルウォーターをタクはゴクゴクと喉に流し込んだ。