年下の不良くん
第二十章
“いつもは早く放課後になって欲しい”と時間が経つのを遅く感じていたが、人生でこんなにも、それを待ち望んでいなかった日は無かっただろう
「はぁ…来てしまった…」
「何をそんなに落ち込んでるのよ」
優美にも伝わってしまう程、私は相当うなだれていたらしい
「あ…いや、何でもないよ
じゃあ、私これから用事があるから」
そそくさと別れを告げて、教室を後にした
翔くんには、今日は母のお墓参りに行くと嘘をつき、夜が遅くなることは言ってある
校門を出て直ぐに私にわかる様に、黒の車が止まっていた
本当に迎えにくるとは…
本格的に私は、父親と呼べるだろうかと言うあの人と、会わなければいけないらしい
ガチャリと中から静かに、数年ぶりに見る篠原さんが出てきた
「こんにちは、りりか様
お待ちしておりました」
「……お久しぶりです」
機械的な喋り方に、偽の作り笑い
昔からこの感情が読みとれないこの表情が、何よりも不気味であった
「会長が既にお待ちです
どうぞ、中へお入り下さい」
車のドアを開けて、中へと誘導される
私はジロジロと物珍しそうに見つめる生徒を背中に感じながら、逃れられないこの境遇に素直に従った
篠原さんが運転する車は、安全運転がモットーかの様に、ゆっくりと走る
沈黙が流れる車内
気まずいな
流れる景色を見ていると、篠原さんが今まで閉ざしていた口を開けた