年下の不良くん

「──よく頑張ったね…」

私の隣に座って、抱き締めてくれる優美の言葉じわりと心に染みた

「…ごめんね
皆には迷惑かけないでおこうと思ったのに、結局は迷惑かけてるね」

「そんな事いいの
りりかが無事で良かった」

そう言って、さらに抱き締める力を強くする

「……翔くんは…??
どうしてる…??」

ずっと、気になっていたのだ

昨日、家を出た時からずっと…

「アイツは…一人でまだりりかちゃん家にいる…
…帰ってくるって、信じて待ってる…」

武蔵くんは、苦い顔をして俯く

「…そっか…
……じゃあ、もう待たなくていい、って言っといて
私、もうあの家には帰らないから…」

“帰らない”じゃない…“帰れない”のだ…

「…りりかちゃん
…翔、すんごい心配してるよ??
アイツがどれだけ、昨日探し回ってたと思う…??
…アイツと離れるって方法より他に、何か別の方法はなかったの??」

そんなの…わかってるよ、武蔵くん…

でも、何の力もない私には、この方法しか思いつかなかったの…

「武蔵、やめなさい
言いたい事はわかるけど、私達に何が出来るっていうの??」

唇を噛みしめる優美は、私の家庭をよく知っていた

母親のお葬式の時、チラッと私の父親を見ていた彼女は、あの人がどういった人なかのかわかっている

だからこそ、一番悔しい想いをしていたのは彼女だった

「……ううん、武蔵くんの言ってる事は合ってるよ」

友達を想う気持ちは、私にもよくわかる

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