年下の不良くん
Side 優美・武蔵
優美と武蔵もまた、家路についていた
「なぁ、優美
りりかちゃんの父親って、そんなにすごい人なのか??」
「うん…
大手企業の会長サマ
りりかはその、隠し子…」
りりかに父親がいないことは、薄々感づいてはいた
最初は単身赴任か何かで家を空けているのだろうと思っていたのが、そうではないのだと気付いたのは最近である
「どんな奴な訳、その父親って」
「…恐ろしい人だよ…」
たまたま、お葬式の時に、りりかが父親と会話をしているのを聞いていた優美は知っていたのだった
娘の名前も呼ばず、冷徹な声で嘲笑う、あの人を…
「…無力、だよね、私って…
親友が苦しんでるのに、何も出来ない、なんて…」
ポタポタと流れ落ちる、涙
あんな、人形の様に笑うりりかの表情を、思い出すだけで心が痛む
ついこの間まで、そんなことは無かったのに…
「それは、俺も同じ…」
小さな震える彼女の肩をギュッと抱き寄せる
りりかは帰り際、この事は誰にも言わないでほしいと、目に涙を溜めて出て行った
実際、誰かに言ったところで、高校生の自分達は何も出来ない
知っているのに、何も出来ない
無力なのは、二人とも同じであった