年下の不良くん
「いや、大丈夫
…あ、すまない何か踏んで──」
そう言って、彼が今、足の裏で踏んでしまった物を取り上げた
それは翔くんから貰った指輪であった
先程、ポケットにしまったのだが、カップをテーブルに置く拍子に落ちたらしかった
「…指輪…??」
「!!す、すいませんっ!!」
バッと奪い返し後ろに隠しす私の顔は、鏡で見なくとも青ざめているだろう
「…誰のなんだ…??」
爽さんの声が、少し低くなったのを私は聞き逃さなかった
必死に言い訳の言葉を考える
「聞いているのか??」
「はっ、母の…形見なんです…!!
こんな物、まだ持ち続けてるなんて、女々しいですよねっ
恥ずかしいです、はは…」
見苦しい…
なんて、バレバレな言い訳だ
そんな嘘にすぐさま気づいた爽さんが、私を問い質そうと口を開いた瞬間、彼のケータイが鳴り響いた
よ、良かった…
心臓が止まるかと思った
電話の相手は春樹だったようで、戻りの遅い爽さんを心配して掛けてきたようだった
そのまま爽さんは私に短い挨拶をして、会社へ戻っていった