年下の不良くん
何とも無理矢理な仮説だな、と自分でも笑けるのだが…
でも彼女が、自分を本当に嫌いになり、振ったという考えが、自分の中で、どうしても受け入れられないのである
「…………ふっ…女々しい男だな」
自分で自分を笑った
手元にある、チョコレートを見つめる
そう言えば、今日はやたらと校内でチョコレートを持った生徒を見る、と不思議に思っていたのだが、バレンタインだからか、と一人納得をする
そして、このチョコレートを、今の彼氏にも上げているのかと思うと、胸がむかむかして、いらいらした
別れたというのに、彼女への独占欲は消え失せることは決してない
翔はチョコレートを大切に仕舞うと、弁当を開けて懐かしく愛しい味を、味わっていた
そんなとき、渡り廊下から愛しい人の声が聞こえる
どうやら、優美と一緒らしく、向かい側の校内にある食堂へと行くところのようだ
自分も中庭にいるが死角になるところにいるため、二人して気づくことはない
楽しそうな声色に、食事を始めたばかりだというのに翔はもう、お腹一杯になった
それはまるで、付き合う前、ひたすらに彼女の事を想っていたときのようだ
苦しい、悲しい、満たされたい
だが、それを全て叶えるのは、唯一人の女
どうか、もう一度だけでいい
りりかを抱き締めたい
そして、今も昔もこれからも、一人の女だけ、りりかだけを、”愛している“
この想いを、伝えたい──
果たして、翔の想いは伝える事ができるか、否や
今の彼らには知るよしもない──
──終──