年下の不良くん
「りりか、君は本当に自分より人の事を気にする子だね」
「春樹…」
「ちょうど今、帰ろうと呼びにいくつもりだったから、先に出ておいてくれて良かったよ
…爽、先に車出してきて」
「わかった」
そう言って爽さんは、この場を離れていき、春樹が机を挟んである椅子に腰を下ろした
「………君の父が来ていた
ごめんね、言うのが遅れてしまった」
たぶん、春樹も父が今日来ることを知らなかったのだろうから、責める気など毛頭ない
「ううん、大丈夫だよ
まさか、話しかけられるとは思ってもみなかったけど」
ははっ、と力なく笑うと、春樹は眉間に皺を寄せて悲しそうに微笑んだ
「………帰ろうか」
私はこくりと頷き、すっと伸ばしてきた春樹の手を握しめて、爽さんが待っている正面玄関へと歩く
横を見上げて綺麗な顔の春樹を見ると、いつもの優しい笑みをくれて、私はほっと溜め息をついた
悲しい顔をする春樹を、あまりにも見たことがないから、心配させてしまっていることが、申し訳なく思った