年下の不良くん
下駄場で靴を履き替えて校門に向かっていると、校門に黒の車が停車していて、私がそれに近くなると、中から久しぶりに見る人が現れた
「こんにちは、りりか様」
「……こんにちは…、篠原さん」
父の秘書の篠原さんは、相変わらず笑うこともなく、機械のような話し方
この人と会うのはパーティー以来で、まさかまた会うことがあるだなんて…
また何か言いに来たのだろう、と身体中に力が入り緊張と、恐怖にかられる
「会長がお待ちで御座います」
軽く会釈されて右手を黒い車へと促したので、父がそこで私を待っていることがわかった
これ以上に、何を私に求めると言うの…??
父が私に会うのは限って、何かを強制する時である
嫌だと断れる事など出来ない為、私は篠原さんに静かに従い、車の後頭部座席に座った
「篠原、適当にどっかの喫茶店に入れ」
篠原さんが乗り込むと直ぐに車は動きだし、駅近くにある喫茶店を見つけると、そこで車は停まる
喫茶店の中に入ると案内された席に、父と面と向かって座る事に違和感を覚えた
父と、こんな風に話すのは生まれて初めてであったからだ
父はコーヒーとケーキを頼み、私は何も頼まず、ただ黙って自分の膝に置いている手を見つめていた
注文した物はすぐにやって来て、父は熱いコーヒーを少し啜って、沈黙を破った