年下の不良くん
Side 春樹
───…………
あれから何時間経過しただろう
俺は、りりかが別れる際に残していった指輪を親指と人差し指で挟んで、飽きることなくずっと眺めていた
“ありがとう"と無理した笑顔をして去っていく彼女の後ろ姿を、追えなかった…
ただ…もうただ、清水翔には敵わないと…そう悟らされたからである
俺だって最初からりりかに気持ちがあった訳ではなかったし、ましてや一回り近く離れている子を好きになるはずがないとそう思っていた
だけど、一緒に生活していくにつれて見えてくる、彼女の性格に段々と惹かれていく自分がいた
いつも家に帰れば待っている、“お帰りなさいお疲れ様"のあの言葉と笑顔に、どれだけ俺の疲労が癒されたことだろう
この生活がこれからも続けばいいと、ずっと願っていたが、次第にやせ細っていく彼女を見ていると、それはもう無理だと思った
加えて、りりかの父親から縁談を白紙にしてほしいという電話
ああ、もう終わりだ
そう感じずにはいられなかった…
……でも、諦められなかった
だから、“離れていくな"、“ずっと傍にいてほしい"等と、もう返事なんて分かりきっていたことなのに言ってしまった
それが余計に、彼女を苦しめていただなんて、俺は本当に最低の男だ…