年下の不良くん
第五十二章
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秋に差し掛かった
今年の夏は慌ただしく受験勉強だけで終わってしまい楽しい思い出は作れなかったが、無事に第一志望校の大学への進学が決まった
合格の通達が来たのは数日前で、努力が報われた嬉しさに私は静かに涙を流した
皆より早くに決まった私は残り少ない高校生活の時間を無駄にしない為に、バイトを始めようかと思っている
──しかしその前に、この進学が決まった事を一番に報告したい人がいた
今日はその人に会うために放課後、翔くんと一緒に向かっている
目的地に到着した私達は少し急な階段を上り、その場所独特の匂いを吸い込んだ
「──お母さん、結果発表を報告しに来たよ」
母が亡くなってから欠かさず、こうして月命日に忙しくとも合間を縫って足を運んでいた
今日は母の本命日で、もう母がこの世を去って五年の月日が経ったが、未だに母が亡くなったという傷が完全には癒えてはいない
でも、うじうじしていても母が悲しむだけだろうと思っているので、この事を口に出そうとは思わなかった
「お母さん、まず綺麗にしてあげるね」
母のお墓を綺麗にしてから、お線香やお花を飾り膝を曲げて腰を降ろすと、翔くんも同じように腰を降ろす
「ちゃんと合格したよ
見守ってくれてありがとう」
きっと、この進学が決まったのは偶然なんかでは無く、母がそうしてくれたに違いない