年下の不良くん
Side 父
お前がこの世を去ってから、今日でもう五年が経ったのか…
早いものだな…
───十九年前…………
年寄りばかりが自分の利益の為に喚き散らす会議があまりにも窮屈になり、俺は会社を抜け出した
こんな事は近頃ではしょっちゅうだ
父が会長の座を引退すると告げたのはつい先日の事で、俺は若くしてその座を引き継ぐことが正式に決定した
そのお陰と言っては何だが、重役がやたらと口五月蝿くなってしまった
「別に俺は会長などには全く興味はないのだが」
ポツリと呟いた独り言は、騒がしい都心に揉み消される
そんなに己の地位と利益ばかりを気にするのならばくれてやる、と言いたいところだが俺の家系は代々続く大企業だ
「……ふぅ…」
缶コーヒーを自販機で買い片手に持ち、もう片方にはタバコを握り、会社近くの公園のベンチに座って一服する
これが俺の最近の至福の時
自分の会社というのに、あそこは居心地が悪いから大嫌いだ
いつもは別に見るわけではないが、ただぼーっと何も考える訳もなく、流れ行く雲を見つめる
そうか、今日は天気が良かったのか
陥れられないかと常に自分の足元ばかりを気にしている日常生活で、そんな事を気にする余裕など全くない