年下の不良くん
第五十三章
「──ここまでが私が知っている話です」
春美さんから聞いた内容は本当に信じ難いものであった
だけど春美さんの表情からして、この話は嘘ではないと物語っている
「父は私を嫌って別々したわけじゃないって事ですか…??」
「それは違います
…あの人ほど、りりかさんを心配している人なんていないわ」
……父の近くにいる、篠原さんや春美さんまでもが、二人とも口を揃えて同じ事を言う
──父は本当に私を愛してくれている
長い年月を掛けてやっと、私はこの言葉の意味を理解し、飲み込む事ができた
そう感じると嬉しくなり涙が溢れてしまった私を、隣にいる翔くんがそっと優しく肩を抱き寄せてくれる
「良かったな、りりか」
「っ…うんっ…」
結局は私は父に拒否される事を恐れて自分から壁を作り、父に嫌悪感などを抱いて拗ねていただけであった
そして、たった一人の私にとってかげがえのない父親なのに、私は父の想いに気づこうともしなかった
素直になればもっと無駄な時間を過ごさずにすんだのに、私は何て愚かだったのだろうか
父はちゃんと私に愛を送っていたというのに…
馬鹿だ私は…