年下の不良くん
第五十五章
次の日、私はこのだだっ広い家の自室で、数ヶ月前に出来た弟の世話を任されていた
弟の名前は蒼汰(ソウタ)くん五歳で、春美さんに似てとっても可愛らしいのだが、人見知りが激しく彼にはまだ懐かれていなかった
小さい子がとっても大好きで、ましてや保育士希望の私にとって、彼に懐いてもらうにはどうしたらいいのかと、最近はその事で頭を悩ましている
今日、この蒼汰くんを預かる事になったのは、母親である春美さんが、実業家の奥様方とのお茶会で、どうしても蒼汰くんを連れていくことが出来なかったからだ
まあ、そういった理由で、かれこれここ一時間、蒼汰くんと仲良くなれるように頑張っているのだが…
「蒼汰くん、こっち来て本読まない??」
「……いかない…」
人見知りを発揮されまくって、全く仲良くなれずにいた
本で誘ってみても、おもちゃで誘ってみても駄目…いったい他に何をすればいいんだろうか
一人で悶々と策を練っていると、部屋の隅にいる蒼汰くんの腹の虫の音が部屋に鳴り響いた
「ふふっ
…ねぇ、蒼汰くん、お姉ちゃんといい物作ろっか──」