年下の不良くん
「あ、そうだ!!
帰ったらそれを飾ろう」
「そんなに大事??」
翔くんから指輪を貰うと、私は大切にハンカチに包んで鞄に仕舞う
「翔くんから貰ったものは全部大事だよ」
ふふっと笑って上を向くと、案の定、少し頬を赤らめて照れていた
「マジ直球で来られるとムリ…」
私に顔を見られないように背を向ける翔くんが、なんとも可愛らしく感じる
「ふふっ、可愛い」
「だから、男に可愛いは禁句だって」
「え〜、どうして??」
「どうもこうも…って、この会話すんの何度目だよ」
「ふふっ、ホントだね」
阿呆、と翔くんは少しだけ目を細めて睨んでから、ふっと笑って私の手を取った
「ほら、兄貴のとこ行きたいんだろ??
そろそろ行こーぜ」
「うん、行こっか
さっそく婚約したこと報告しよっと」
きっと翔くんと同じ笑顔で、“おめでとう"と喜んでくれるに違いない
「馬鹿、んなの言わなくていいだろ」
「えー、言いたいんだもん」
焦っている翔くんを見上げる
最初はただ、仮で付き合い始めた関係だったけど、翔くんと時間を共有するにつれて、私は彼に恋をした
“不良、不良"と呼ばれて怖がられていた翔くんの意外な一面を見る度に、確実に惹かれている自分がいた
想いが通じ合ったあの時の喜びや嬉しさは、今でも、ううん、きっと生涯忘れない
一度は離れ離れになったが、またこうして寄りを戻せたのは、母のお陰かなっと思う
父とのことも一番、親身になってくれてる翔くんだからこそ、この人と結婚してもいいと感じた
本当に、翔くんに出逢えて良かった
今ではもう、翔くんがいない未来なんて考えられない程、私の心は彼のものになっている
「──翔くん、ありがとう、愛してるよ」
不良だけど、可愛い翔くんを、心から愛してる──
───完結───