鬼龍‐金色の覇者‐
「…俺だ。」
それから十分くらい経って、匡の携帯がなり始めた。
ワンコールも鳴り終わらない速さで携帯に出た匡を藤夜はバッチリ見ていた。
その異様な様子に秋は目を丸くし藤夜は苦笑した。
「いま何処だ……、は?広場みたいな所?近くに目印…、あー。解った、直ぐに行くから動くなよ。」
何時もより口数の多い匡にやっぱり秋はポカンとしている。
藤夜にいたっては、笑うのを堪えているようだ。
「あの、バカ…。」
「来てるって?」
「あぁ、ちょっと行ってくる。……迷子になったらしい。」
ガキかよ。と呟きながら匡は屋上を出ていった。
「ねー…、藤夜。」
「何ですか?」
「明日は嵐かなぁ…?」
「ぶはっ!」
藤夜が爆笑するのと同時にベンチに座っていた少女――日向姫蝶(ヒュウガキチョウ)――はくしゃみを一つした。