幸せになりたい
『何をするの?離して!!』

「こんな状態で、帰れるのか?」

『帰るわよ。あんたには関係ない』

「とりあえず、俺はお前の上司だからな…」

『ここでは関係ないわ。さようなら…』

私は腕を振り払い一歩足を進めた。

その途端、また、あいつが私の腕をつかんだ。

「まだ、そんなに酔っていないんだろ…
 俺の味がどんなだったか覚えてないんじゃないか?
 だったら、きちんと教えてやるよ。
 まあ…知ったら、毎日欲しくてたまらなくなるんだろけどな…」


あいつは私の耳元で、そんなことを言いだした。

『結構よ。いらない…味見しなくては、たいしておいしそうじゃないもん』

「ずいぶんと食べ慣れた言い方だな…」

『そうね。おかげさまで、不自由はしてないわ。』

「奇遇だな、俺もだ。お前にこだわる必要はないが・・・
 俺が、もう一度味見をしたいと言ったら?」

『冗談はやめ・・・て』

健太郎の目があまりにも澄んでいて…嫌だと言いだせなくなっていた。
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