ましゅまろハート
家の玄関前に立ち、

溜息をひとつつく。


美波さんたちが去ってから、

俺はしばらくの間、

その場から動くことが

出来なかった。


あいつ、

秀一の言葉が俺の頭の中で

お寺にある大きな

鐘の音のように鳴り響く。


どうにか歩いて

ここまで来たものの、

どうやって

ここまでたどり着いたのか

覚えていない。


「ただいま」


玄関を開けて

とりあえず中にいる母親に

声を掛ける。


「あ、タク。おかえり。

 あんたに郵便届いてるわよ。

 下駄箱の上に置いてあるから、

 ちゃんと取っといてよ」


「あぁ」


いつもなら母親には

返事をしないのだが、

今日は頭が回らないからか、

返事を返す。



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