光の射す方へ
「有難う御座いました!」
午前5時の閉店時間を迎えて、私は最後のお客さんを送り出した。
ホールでは、圭太が閉店後の掃除を始めている。
私は売り上げを数えながら、日報を書き、レジを閉める。
午前5時30分。
それぞれの閉店作業を終えた従業員達がホールに集まり、終礼が始まる。
長い勤務がようやく終わった。
私は真っ先に歩太に駆け寄り、声をかけた。
「お疲れ様!」
歩太は私の横を素通りすると、店長の元へ行き、
「もう、帰っていいですか?」
と言った。
「あっ、ああ。ご苦労様。」
その場に居た、誰もが歩太の行動に苛立ちを覚えた。
「リカちゃん、アイツ殴ってやろうか?」
圭太が、歩太の後ろ姿をじっと見つめながら呟いた。
「きっと、疲れちゃったんだよ・・・。」
私はそう言うと、圭太に笑ってみせた。
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