光の射す方へ


「本当に大丈夫なの?」



予定日を過ぎても、なかなか産まれる気配を見せない赤ちゃんに、歩太は毎日心配顔。




「初産だから、予定日過ぎる事は、珍しくないんだよ?」



私は、大きく膨らんだお腹を、さすりながら、心配する歩太の頭を撫でる。









そして、6月14日の早朝。予定日を1週間過ぎて、遂にその時を迎えた。





「歩太、・・・陣痛きたかも・・・。」



私は、激しい痛みに顔を歪め、歩太を起こした。




「えっ・・・本当にっ?

あっ・・・タクシー、


救急車?」



歩太は明らかに動揺している。



「歩太、落ち着いてよ・・・すぐには産まれないから・・・

とりあえずタクシー呼んで、病院行こ」


痛みが和らいだ時、歩太の焦る顔をみると、私は何だかおかしくなった。



「リカ、タクシー来たよ!歩ける?」



「うん。・・・いったっ・・・い・・・痛いっ」



再び襲った痛みに、私は思わず、その場にしゃがみ込んだ。


「リカ、大丈夫?頑張れ、頑張れ!」



背中をさする歩太の手が、私を勇気づけてくれる。





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