光の射す方へ




お弁当を食べ終えると、私は再び緊張していた。



テレビもコンポない部屋に、無口な歩太。



さっき私が言った『帰りたくない』という言葉を、歩太はどういう風に受け取っただろう?




そんな事を考えていると、歩太が青い携帯電話を、私に差し出した。



「これやって?」



「あっそうだね!教えてあげるよっ!」


私は、自分が分かる範囲内だけの、機能を説明した。


歩太は興味津々で私の説明を一生懸命、聞いている。



「何か、音楽ダウンロードしよっか?」


私がそう言うと、



「俺、音楽とか分かんないから、リカの好きな曲でいいよ。」




って歩太は言った。




『リカ』って言った・・・。


歩太が私を『リカ』って・・・。



あまりにサラッと言うから、聞き逃しそうになったよ。




自分の名前なんて、呼ばれ慣れてるのに、歩太が言うと、何でこんなにドキドキするんだろう?





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