雨の日の猫
タイトル未編集
それは、どしゃ降りの雨の日。
掛け持ちのバイトも終わり、
もうすぐ家に着くなー。
…ってとこで私が足を止めたのが始まりだった。
目線の先には、雨でよれよれになった
段ボールの中にびしょ濡れで、
泥だらけの不細工な黒猫が一匹。
─────‥と、
『─‥にゃあ。』
此方もびしょ濡れで、泥だらけな
「お、とこのこ…?」
『…オレ、女の子に、見える?』
襟足が長い黒髪を雨を滴らせながら
綺麗な灰色がかった瞳で、
私の瞳を見つめながら聞いてくる。
私が戸惑いがちに首を左右に振ると、
『だよね。』と男の子は微笑んだ。
その微笑みでハッと我に返り、
時間を見る。
─────‥23時40分。
「え、と…君、高校生?
こんな時間まで何してるの?
『んー…話すと長いよ?』
これは…所謂、家出か?
「…とりあえず、家に─」
『家なんて、ないよ。』
ピシャリと言い切られ、
私は眼を見開いたまま何も言えなかった。
男の子は黙ったままの私を見つめ、
クスッと笑って言葉を続けた。
『ホットミルクが飲みたいな、
…オネーサン?(笑)』
「…え、ホットミルク?」
男の子の要望は唐突すぎて、
そして突飛すぎて、正直私の頭は付いていけてなかった。
『うん。寒いし喉乾いたし濡れたしさ。
もしかして見てみぬふりして
風邪引かすつもりなの…?』
「…え!?私の家につれてけってこと!?」
『まぁそうだね。』
「でも自分の家に『─‥っくしゅん!』
「…」
『…ずびっ』
上目使いですがるように見てくる。
私は、はぁ…と溜め息をついて
彼が望む言葉をかけてあげた。
「…雨、上がるまでだからね?」
『やった♪』
子供の頃によく捨て猫を拾って
お母さんに怒られてたなぁ…。
今となっては、
一人暮らしだし誰も怒らないけど。
…とりあえず、明日には止むだろうし
1日くらいいいか。
そんな事を考えながら歩いてると、
いつの間にかアパートの前まで
着いてしまっていた。