雨の日の猫





玄関の鍵を開け、扉を開く。


「あ、シャワーでいいなら
 すぐ入れるから入ってきたら?」


靴を脱ぎながらそう言って振り向くと

男の子はまんまるな目を更にまんまるにして

ぽかんと口を開けていた。




「…?お風呂嫌い?」


『…や、っていうか、
 風呂に入ってもいいの?』


「?」



私がきょとんとしたまま見つめると

男の子はクスクスと笑いだし、靴を脱いだ。



『面白いね。オネーサン。
 ミルク飲ましてバイバイかと
 思ってたのになぁ(笑)』


「───ぁ、」


『もしかしてさ、こーゆーのご希望?』



気付くのも、反応も遅かった。

ドサッとソファーに押し倒され、

上から覆い被さってると理解したのは、

濡れた髪から滴る雨の滴が、

頬に伝ったからだった。




冷たい唇が、首筋を這う。

ひやっとする感覚で身体が反応してるのか、

それとも快感に身体が反応してるのか、

どっちなのかは解らなかったが、

ただ、自分の善意が…

いや、善意と言うよりは偽善の方が

しっくりくるのかもしれない。


とにかく、良かれと思ってしたことが

こんな形になるなんて想像もつかなかった。



『…なに、震えてんの?』



私の服をはだけさせる手を止め、
彼は問いかけてきたけど

私は両手で顔を隠したまま、黙っていた。



『─‥ごめん。お風呂、借りるね。』




ゆっくりと私から離れ、

倒された拍子に床に落ちたタオルを拾い、

男の子は風呂場へと去っていった。






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