雨の日の猫
風呂場から扉が開く音が聞こえた。
『拾ってばっかりしてたら、
いつか痛い目に合うわよ!』
お母さんによく言われた言葉が蘇る。
お母さん、私、今日痛い目に合った。
怖かったし、悲しかった。
そう心の中で呟くと寝室の扉が開き、
男の子がベットを背凭れに座った。
私はベットの上で丸まって
寝たフリをしようとじっとしていた。
テーブルの上に、
少し冷めたホットミルクを置いて。
『…風呂、ありがと。
聞いてないかもだけど
俺ね、家出してきたの。』
…あぁ、やっぱりな。
『ここ数ヶ月、色んな所行って
色んな人んちに泊まってた。』
私には、関係ないこと。
『…皆、男に飢えてたから
オネーサンもそうなんだと思った。』
……。
『手っ取り早く済ませて
風呂借りて寝ようって思ってたけど
…お前、震えてたから戸惑った。』
────‥ごめんな、
ミルク、ありがと。
私は、そう聞こえたのと
そっと髪を撫でられる感触の中、意識を手離した。