触れる指、乱される心

私の気持ちなんて知らない秀は、クスクスと笑いながら自分の指を見つめる。

長い指。
男の人とは思えない、潤った指先。

どうしてこの指は、ピアノしか愛さないんだろう。


「……そうだよね、ご飯食べる時も使うね」


同調すると、
秀の指が驚く行動に移った。

頬に感じるのは―――
―――秀の、指?

真っ直ぐに私に向かって伸びている秀の腕。


「こうやって、女の子に触れるときにも使う」


秀の指は、頬から私の唇へと、ゆっくりおりてきた。


トクン、と大きく鼓動が跳ね上がる。


秀の指が、私に触れている?


決して、誰にも触れることがないと思っていた、秀の指先は。

私の唇をなぞると、今度は顎をとらえた。
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