触れる指、乱される心

「当たり前だろ? この指は、大好きなものにしか触れない」

「……大好きなもの?」

「あぁ、ピアノと飯を食べるための箸と、凛」

「……私は三番目なんだ」


少し嫌味を込めて口を開いた。


「でも、こうやって触れて悦んでくれるのは、凛だけだ」

「そんなことない、ピアノも秀に触れてもらえたら、喜んでると思う」

「……いや、悦びの種類が違うからな」


秀は、もう一度私の頬から唇へと指を這わせた。



【完】
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