地球の三角、宇宙の四角。
一番下まで降りると、大きな薄い緑色の鉄の扉が少し開いてあって、まぶしい光が薄暗い階段フロアにさしこんでいた。

中を覗くと、そこは学校の体育館ほどの大きさで、壇上ではマイクを持ったスーツ姿の男が涙を流しながら拳を振り上げて「ありがとうございました! ありがとうございました!」と絶叫している。その横には車イスに座った老人が、横で叫ぶ男とは対照的にうつむいて、うなだれたように座っていた。

医者や看護師であふれかえったフロア全体は2人から5人ぐらいの小グループで向かい合わせになってお互いのことをののしりあったり有り難うございましたと頭を下げたりしながら絶叫している。そのなかにキツネ目の女を見つけて暫くの間、息を整えながらその不思議な光景を、ただただ見ていた。

キツネ目の女が私に気が付いたようにこちらを見ているような気がした。


少しだけ笑った彼女は、また先ほどの絶叫作業へと戻って行った。

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